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【SW2.0】『不退転』の背中 [キャラ語り]

さて、本日は先日高レベルに行ったドラクレスについて、本名を名乗り始めたことと、プリースト取得についての経緯をまとめたSS書いてみました(´ω`)ノ
拙いものではありますが、興味のある方は「続きを読む」からご覧くださいませ。



「恋とは、請いである」
そんなことを大昔の詩人が言った……かどうかはさておいて。
もしそれが真実であるのならば、彼の想いもまた、『恋』であったのだろうか?
 
 
 
まっさらな草原。
風の吹き抜ける夕日の丘。
その頂上に、一つだけ飾り気の無い石がぽつん、と雨ざらしになっている。
石には、一行だけ文字が刻まれている。
「”不退転の”レイロン・リー」と。
 
「……本当に死んじまったんだな、お師匠さん」
 
おそらくは墓碑であろうその石の前にたたずむのは、大柄な赤い竜人の男。
柘榴石亭という冒険者の店では、それなりに腕利きの『レッド』という名の冒険者だ。
もっとも、これは彼の本名ではなく、勝手に名乗っているに過ぎない名だが。
 
「知らせ聞いたときには、信じられなかったぜ……。あの、殺しても絶対死ななさそうなババアが? ってな」
 
石碑の前で、どっか、とあぐらをかいて座り込む男。
そのまなざしには懐かしさと寂しさと…深い情が込められているように見てとれる。
 
”不退転の”のレイロン。
その名の通り、生涯を通して敵に背を向けなかった…という逸話で知られる、恐ろしく強い格闘家。
金の鱗と銀の鬣、豪快かつ竹を割ったようなさっぱりとした性格。
さらには、尻尾を使った独特の格闘スタイルで、地元ではそれなりの有名人となっている、そんなリルドラケン女性。
 
「ったく。冗談じゃねえよ……俺ぁまだ、アンタから一本も取り返してねーんだぞ」
 
笑っているような、自嘲のようななんともいえない表情で、彼は呟いた。
彼が師のもとを飛び出してから、もう5年以上の時が経過している。
 
幼いころ、命の危機に晒された彼を救ったのは、彼女だった。
トンでもな本を信じて自己流の格闘術を覚えようとしていた彼に、その基本を伝授したのも彼女だった。
稽古の際、決して手を抜くことなく、いつも完膚なきまでに叩きのめしたのも彼女だった。
「真の格闘家が敵に背中を向けていいのは、仲間を庇うときだけだ」と教えたのも、彼女だった。
 
「なあ、お師匠さん。もしあんたが生きてたら……ここにいたら、今の俺様をどう思ってくれんだい?」
  
あの時は、短絡的な意地や反骨心から、冒険者として武者修行する道を選んだけれど。
師とともに歩んだ自分を恥じ、自らの名を捨てたけれど。
そうして生きた冒険者としての時間で、彼は様々なことを学んだ。
 
力だけではどうしようもないことがある、ということ。
共に歩む『仲間』というものがあるだけで、自分が何倍も強くなれること。
自分という存在がいかにちっぽけであるか。
……そして、師である彼女がいかに強くて、大きな存在だったか。
 
それに気づいて、ふと立ち止まったとき。
すでに師は病に倒れ、帰らぬ人となっていた。
そのことを知ったのは…数日前のこと。
 
「多少は、いい使い手になったって思うか? それとも、まだまだひよっ子だって笑うのか?」
 
瞳を閉じ、天を見上げ…彼はふっと微笑んだ。
 
「……俺。ちゃんと、あんたの弟子として恥ずかしくねえ格闘家になってんのかな」
 
心は、静かだった。
彼自身も、信じられないほどに。
目指す高みを、師の背中を失ったなら、もっと動揺するんじゃなかろうか…そんな確信すらあったのに。
今、彼の中にあるものは、絶望の海でも、悲しみの豪雨でも、後悔の嵐でもない。
静かな……どこまでも静かな、それでいて熱く揺らめく、『炎』だった。
 
「俺ぁよ、お師匠さん。アンタの背中、きっと超えてみせるぜ」
 
今は届かぬ存在となってしまった師。
彼女が静かに眠る墓碑を前に立ち上がり、男は薄汚れた鉢巻をそっと外した。
 
「まあ、アンタが背中を見せねえってのは、よーくわかってっからよ……」
 
鉢巻を拳に握りこみ、精神を集中して。
渾身の正拳突きを放つ。
 
「回り込んででも、遠回りしてでも……とにかく、絶対に超えてみせっから、覚悟してろよな!!」
 
握りこぶしを解くと、はらり、と舞う鉢巻。
薄汚れた白鉢巻が、夕日の茜色に、真っ赤に染まる。
 
 -戦え。
 -鍛えよ。
 -工夫せよ。
 
その時、彼の知らない『誰か』の声が、ふと耳に届いたような、そんな気がした。
 
「……わかってんよ、これからはちったあ頭使うこともやってやらあ」
 
石碑に背を向けながら、不適に笑う。
それはさながら、神聖なる誓いの如く。
 
「そうじゃなきゃ、あのババアにゃ、絶対追いつけねえかんな!」
 
その日、彼は名を捨てた。
自分を脚色し、偽るための、もう一つの名を。
そして、再び名乗り始める。
師に教わった自分の全てで更なる高みを目指すため、親に与えられた本当の名を。
 
 
 
「恋とは、請いである」
相手の魂を、請う事こそが恋なのだと、大昔の詩人が言った…かどうかは定かではない。が。
それが真実だというのならば、彼の想いもまた、恋と呼べるのかも知れない。
 
師と仰ぐ人物を誰よりも尊敬し、その技の伝授を、高潔な心と魂を、請い、願う。
その想いが燃え盛る烈火のごとく、胸に揺らめいているのだから。
 
-了-
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